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恐怖のレストラン / 聖飢魔II
失恋船長 ★★★ (2018-09-06 00:12:27)
お茶の間の知名度もあがり、ついに紅白歌合戦に出るまでのバンドに上り詰めた悪魔の集団。その先にあったのは海外公演だったのだが(EARTHSAKERと海外で一緒にやった記憶もある?)そんな世界の舞台を踏んだのが影響を及ぼしたのか、悪魔と言うキャラクターを生かしたシアトリカルなステージングをそのままパッケージした印象が強いアルバム。

売れると共にHM/HRと呼ばれる範疇のバンドの割に、歌謡テイストも増え日本のロックバンドぽくはなっていた。特にレベッカの土橋をプロデュースに迎えた『THE OUTER MISSION』などは、メタルとして聴くと方向性が拡散している、しかしバンドのメンツを見れば多様な音楽性を吸収している悪魔達なのでクオリティは高かった。
そして次にリリースされた『有害』は閣下お得意のハイトーンを封印。あえて中音域を意識した歌唱スタイルに固執。色モノ扱いからの脱却。個性的な歌唱スタイルも、言いがかりのような非難を浴びたりしたことへの対抗心だったんだろう。その為に、イマイチ魅力が伝わらないアルバムになった。作品前に訪れる不安定要素、ジェイル大橋の離脱なども影響したのかも知れない。

そんな問題点を抱えた中で1992年にリリースしたアルバムが今作にあたる。へヴィメタルは斜陽を迎え、日本でも多くのバンドが解散を余儀なくされた。そんな中で悪魔達は見事にやってのけたのが、このアルバムなのだ。
おどろおどろしいタイトルからして彼らが長年培ってきたコンセプトが見えてくる。その世界観をへヴィなサウンドに乗せて見事に昇華した会心のアルバム。バンド本来の魅力たるハードさの復権は初期のファンにとっては嬉しいニュースとなったが、閣下作曲の楽曲が多く収録されているだけに、歌メロは勿論だがキャッチーで派手な曲が多い。
ダークなのだが、賑やかな絶叫ショー、見世物小屋と言うよりは海外のフリークショーといったドライさがこのアルバムの特徴なのだろう。女性の悲鳴や語りなど、SEも多くとにかく仕掛けてきたアルバムだった。
こういう作りだと、もう少し低音に重さが欲しいのだが、メジャー流通となると望むべくもないだろう。そこが残念な気分にさせる。
しつこいようだが、雑誌で0点を喰らい、音楽性のみならず存在を否定されたバンド。その為に、持ち前のキャラを生かし芸能界で活きていくしかなかった。その集大成が究極の折衷案とも言える今作を生み出したんだろう。
しかし期待した程の成功を収める事が出来ず、その反動が次回作へと繋がる事になるとは皮肉な結果となった。

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