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Mad Max / MAD MAX
失恋船長 ★★ (2018-11-09 12:19:28)
ドイツ産の正統派HM/HRバンドが1982年にリリースしたデビュー作。当時のタイトルはスバリ『Heavy Metal』でしたが、2009年にポーランドのMetal Mind Productionsからの再発盤ではタイトルが『Mad Max』に改変、どうやらタイトル『Heavy Metal』は自主製作盤のみだけで、オフィシャルリリースの商品は『Mad Max』だったらしい。

時代はNWOBHMの嵐が吹きあれる80年代の初頭。その勢いはヨーロッパ全土に拡散していくのですが、このバンドもご多分に漏れずNWOBHM直系、歯応えのあるリフワークと剛毅なリズムに押し出されるメタリックなサウンドを披露。欧州的なメロディを引っ提げ力強く突進していきます。あまりにも実直なスタイル故に個性は薄いのだが、マイケル・ヴォスも参加していないと言う事で、素朴なという言葉がフィットするスタンダードなハードサウンドを響かせている。

所謂ハロウィーン登場前のドイツという事になるのだが、ハロウィーンにはとても興味深い話がある。彼らの魅力は、明るく朗らかで純朴なメジャーキーによるメロディがあると思うのだが、あのメロセンスと言うのはドイツを中心にオーストリアやポーランド位までで流行ったシュラガーと呼ばれるサウンドによる影響が強いらしい、日本で言うところの昭和歌謡、ムード歌謡的なものに該当するのだろうが、そのドイツ近郊の国で1960年代に流行った音楽を、ハードロックに持ち込み成功したのがハロウィーン。日本ではジャーマンメタルと言えばACCEPTやSCORPIONSよりもハロウィーンの方がイメージも影響も強いのだろうが、それは実に限定的な話で、ドイツでも稀有なスタイルだったと言える。彼らのスタイルはごく限られた地域でウケた歌謡曲のメロディを導入したと言う事なのだ。そして、そのシュラガーは80年代には下火になったのだが、90年代にはユーロビートなどに大胆に持ち込まれ、知らず知らずの内に多くの人が耳にする音楽になっているらしいと、欧州経済と文化に詳しい、大学の講師に教えてもらった事がある。どこまで本当なのかは分からないが、ハロウィーンサウンドの根幹となる、コミカルタッチのメジャーキーサウンドは紛れもなくシュラガーの影響だと言うのは、こういうバンドの音を聴けば合点がいく。

そして地味だしキャッチーさも足りないが、それでもロックの塊のような豪快なサウンドには、何物にも属さない古典的なスタイルを踏襲する生真面目なHM/HRサウンドであったのは間違いない。むしろ欧州的なスタンスのサウンドと言うのはコチラの方が正統と思えるからね、文化の成り立ちを知ると知らないとでは全然話が違ってくるのも面白い。

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