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独り言・・・
正直者 (2019-05-25 20:37:53)
20年前の話。
上司の娘さんが不登校になったと相談を受けた。当時の私も若くはないが、娘の話を聞いて欲しいと打診された?何故私なのか?不思議でしょうがなかったのだが、話を聞くと、その奇妙奇天烈な内容に驚かされた。

何故学校に行かなくなったのか…
ミュージシャンになりたいので練習したいから学校に行きたくない。いく必要もない。学校なんて行ってられないぜである。
やばい、やばい奴だ。イタイ、痛すぎる。

彼女はベースを練習。教則本を買い込み、DVDを見ながら部屋に籠る日々。髪を紫に染め、耳や鼻にピアス、素顔は可愛いのに、ド派手なメイクで台無しの美人ちゃん。ダルダルのセーターを着ていたのも摩訶不思議なファッションだった。

根掘り葉掘り話を聞くうちの、その甘い感覚というか、乏しい知識に驚いた。
彼女が憧れているベースはGLAYはルナシーのビジュアル系。理由は国内向けの雑誌で常に人気ランキング上位だから。
つまり、この二人のベースプレイを完璧にマスター出来ればプロになれると完全に信じ切っていた。
プロへの最短距離、それは二人の完コピを信じて疑わない。この判断力に驚かされた。譜面が読めるわけではない。音楽的な教養が豊かなわけでもない。ただ、流行の音楽を追い求めているだけ、本当にそこの浅い音楽歴で勝負していた。

だれかのコピーが出来てもプロになれるわけがない。そこにオリジナリティや斬新さがない限りね、ましてやビジュアル系アーティストのベースプレイヤーレベルである。彼らが悪いのではない。人気投票で選ばれたプレイヤーのコピーである。
上手い下手をジャッジしているのではない。そもそも彼女に、その知識もない。誰が上手いではない。人気者の技を盗むが一番という発想だった。

本当に怖かった。心底ゾッとした。このセンスというか、判断力の脆弱さに震える。
彼女の根本を否定する為に、私は、この大役を降りたが、上司には一日も早くベースを取り上げる事を進めた。イチローのバッティングフォームを完コピ出来てもニッチローにしかなれない。プロ野球選手にはなれない。そんな事を理解出来ない人に、手を差し伸べるのは不可能だった。19歳って、そんなに天然か?ピュア過ぎるだろう。

世に中には恐ろしい人間がいる。司馬遼太郎の三国志を読んで、自分は三国志マスターだと思える奴。雑誌を読んで得た知識は、雑誌の内容に詳しいだけ。けして物知りではない。一番怖いのは、この客観性にある。自分自身が、どの程度なのか?少なくとも雑誌やラジオ、そしてレコードのレビューに詳しいだけでイケるわけがない。
でもいるんだよな。信じて疑わない天然がね。
問題の女の子は21歳で出産。今はネイルのお店を開いている。勿論、ベースなんて弾けるわけがない。彼女は幸せに暮らしている。麻疹を患ったようなもんだ。

鈍感力も度を過ぎれば迷惑。ヤバいよ。怖いよ。恥ずかしいよ。空気の読めない発言を繰り返し蔑まされる人間にはなりたくない。見るのも辛いもんだよな。

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