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In This Room / THE 3RD AND THE MORTAL
病みの皇帝 ★★★ (2020-03-08 16:01:43)
The 3rd and The Mortalの最高傑作。mokusatuさんとほぼ同意見。

1stは当時としてはエポックメイキング的な作品であり、後続のバンドに大きな影響を与えたのは間違いないが、クオリティの面で抜きん出ているかと言われると疑問符がつく。現代のフィメールゴシックの多くが間接的に彼らの1stの影響を受けているからだと思うが、今聴くと平凡なフィメールゴシックに聴こえてしまう。ところが、本作品(および2nd)のサウンドは完全に、The 3rd and The Mortalしか作り得ないもので、真の意味で唯一無二である。2ndも良いのだが、個々の楽曲のもつカオスをコントロールしきれていない感がある。

翻って本作品では、部分部分を切り取ると何の脈絡もないサウンドのように聴こえるが、通して聴いてみると、不思議と統一感がある。まるで精神が徐々に融解していき、つかみどころのない音楽と同様、様々な感情が押し寄せつつ、拡散と収斂を繰り替えしていくかのような感覚が得られる。①⑥⑬の、ある意味「わかりやすい」曲の配置が絶妙で、間にある曲によって意識が持っていかれそうになる寸前で、はっと我に返ることができる。どれも陰のあるメロディーが美しく、このアルバムのハイライトと呼べそうだが、実際にはこのアルバムの聴き所はつかみどころのない楽曲群だと思う。とにかく音が良い。あらゆる一音一音が心地よく、不穏なノイズさえも、楽曲の個々の世界観を作るのに一役買っている。まるで一曲一曲が一つの世界に対応していて、アルバムを通して聴くと、それらの世界を次々と旅していくような感覚に陥る。⑥以降つかみどころのない曲が連続してしまう(⑨もそこそこ歌モノとして聴けるが)ため、アルバムの終盤に向かうにつれて本当にどこかへ行ってしまいそうな構成だが、最後の最後の⑬で現実世界に戻ってくることができる。

はっきり言ってメタルとは程遠い音楽だが、はまる人ははまるし、はまらない人ははまらない作品だと思う。個人的にははまってしまい、この音楽性を探し求めているが、なかなか見つからない(強いて言えばAtroxあたりだろうか)
→同意