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Stampede / KROKUS
火薬バカ一代 ★★★ (2020-05-06 00:14:10)
’89年発表の『HEART ATTACK』を最後に、ほぼ解散状態にあったというスイスのベテランHRバンドKROKUSが、'91年に帰還の挨拶として放った11thアルバム。(日本盤はVICTORからのリリース)
正直、この頃彼らについては「名前は知ってるけど…まだやってたの?」と完全に興味の範疇外。しかもバンドというよりは唯一残ったフェルナンド・フォン・アルプ(G)のソロ・プロジェクト状態ゆえ、本作に対する期待値は限りなくゼロベースだったのですが、しかし後追いで聴いて吃驚。これが名盤『髑髏の紋章』(’83年)にだって負けない気迫が漲る力作じゃありませんか。
脇を固めるメンバーも、元KILLERのマーニー・モーラー(G)、マーク・ストレイス激似のカミソリ・シャウトが鼓膜をつんざくピーター・マクターナー(Vo)、後にPOLTERGEISTに参加するピーター“ラビット”ハース(Ds)等タレント揃い。疾走感溢れる曲調にツインGの劇的なハモリが華を添える①と、緩急を飲み込みアルバムを締め括る⑪という強力なスピード・ナンバーを頭とケツに配し、HM賛歌②(どこかMANOWARの“KINGS OF METAL”風)、重厚な⑤、ノリ良く飛ばす⑥、歌詞が“TOKYO NIGHTS”の続編みたいな⑧、そしてクライマックスをドラマティックに盛り上げるバラード⑨といったバラエティ豊かな楽曲がその合間に敷き詰められた本作は、自らの原点を見つめ直し、再びアクセルを踏み込まんとするバンドの堅固な意気込みが感じられ、好感度もボルテージもうなぎ上り。
HR/HMシーンが大きく変貌を遂げ始めた'90年という時代の節目に不幸にも埋もれてしまった感のある、KROKUSが残した隠れた逸品ですよ。

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