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The Heretics / ROTTING CHRIST
kamiko! ★★★ (2020-06-16 01:05:07)
ギリシャ産ブラックメタル2019年作
ジャンルはブラックとしたが、演奏様式は決して純粋なブラックメタルではなく、ブラック+メロデス+インダストリアルといった感じか。
このバンドの作品はKhronos(2000年作)が初体験だったため、丁度音楽性の過渡期あたりの作品だけに当時は一線級のサウンドに感じなかったが
アルバム毎で随分と音楽性を変えており、一般にブラックメタルと言って想像する音楽性でアンダーグラウンド臭がするのは初期4作品。
ちなみに、ここの解説やレヴューを見ると、たぶん初期2作品がカウントされていないんじゃないかな。セルフリリースのカセットが処女作、
続くミニアルバムが2ndアルバムとして存在している。5作目あたりから徐々にアングラ臭が抜けて、メロデス・ゴシック的なテイストに変化していき
より大衆受けする音楽性に発展していく。ボクは普通はそうなるとあまり興味がなくなってしまうんだが、独自の音楽性を堅持しているので
初期作品以降もなかなか捨て置けない魅力を持っていると感じている。
近2作品は未聴だ。最も好きな盤は初期のNon Serviam(1994年作)だが、メロディアスな楽曲を前面に出したA Dead Poem(1997年作)や、
若干ブラックメタル寄りに回帰した快作Theogonia(2007年作)、同郷のダークサイド女声ヴォイスパフォーマーのDiamanda Galasが参加している
Aealo(2010年作)あたりが必聴盤だ。
濃厚なアンチクリスチャン思想を持つバンドだが、Profanaticaのような自己崇拝や悪魔崇拝的な感じはなく、宗教に縛られることに対し批判的な立場だ。
何かを崇拝するような祭儀的・悪魔的な濃さというのとは若干テイストが違い、バンド名やジャケイメージのワリに禁忌・背徳的・卑劣さという感覚は意外にも薄い。
この昨年発表の盤は、重厚なギター、反キリストながら神聖な雰囲気、何かを訴えるかのような語り口調、不穏なメロディではなく、前向きな音楽性が特徴だ。
爆発的なブラストや、トレモロリフを多用するような演奏様式ではなく、旧来の味わいのあるブラック寄りの、仄かにインダストリアルさが加わったサウンドだ。
こういう味わいを武器にする、長く活躍するベテランブラックメタルはボクのツボにすごーくハマる。
ただ、ブラックメタルのレビューを書くと決まり文句になりがちだが、もう一度、初期のアンダーグラウンド臭のする濃いブラックメタルをやってほしいとも思う。

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