この曲を聴け! 

今週のアルバム10選
失恋船長 (2020-06-16 12:40:58)
『麗しの女性メタルその⑥』

①ACID - 『ACID』
ベルギー産のスピードHM/HRバンドのデビュー作。シンガーは紅一点のケイト嬢。スケ番野良猫シャウトをかます彼女の、絶妙な舌足らず感がバンドの色をキメている。何とも言えない嘘くささ、そのアングラ臭を倍増させる直情的なビートに導かれる魔術的な響きと淫靡なイーブル臭を撒き散らしながら走ってくる。こういう音は女性シンガーでしただせない。上手い下手では語れない彼女のパフォーマンスに魅了されます。幻のライブ音源も捨てがたいが、初体験の衝撃を尊重して、こちらに軍配を上げます。


②Plasmatics 『Coup D'Etat』
ロックビッチクイーンの名を欲しいままにした、我らがウェンディOウィリアムス嬢率いるバンドの2枚目。ステージではパンイチ、乳首を隠すだけの姿で刺激的なパフォーマンスを繰り広げていた。そんな破天荒さは戦車が大々的に映るジャケからもプンプンと香っているが、けして色物的なエッセンスの強いバンドではない。パンクな精神性が充満したハードサウンドはクロスオーバースタイルの先駆者と言っても大げさではない、バイオレントかつメタリックなサウンドを轟かせていた。ウェンディのドスを効かせた歌声も迫力満点、狂気を滲ませるハイテンションなパフォーマンスに圧倒されます。

③SARAYA 『SARAYA』
紅一点のシンガー、サンディ・サラヤの存在を前面に出したアメリカのバンド。時代は1989年、こういうラインナップにありがちな、妙な色気を音に乗せない本格派のハードサウンドは説得力十分。ヒット狙いの能天気なナンバーも見当たらず、地に足が付いた方向性だなぁと感心、アメリカングルーブ主体と思いきや、⑦では紫色の血が騒ぐ虹色ロックを披露したりと、多様性も十分に感じさせる。DANGER DANGERのトニー・ブルーノが絡んでいるのも安心材料ですね。

④Touchdown 『DON'T LOOK DOWN』
カナダのキーボード込みの正統派HM/HRバンドの1st。ペラペラの音質の為に、ダイナミズムが全く伝わらない枯れ線具合にニヤニヤさせられるが、その分、味わい深いものがある。けしてレトロの音を追求したわけではない、環境が生み出したシケ具合がたまらん。紅一点の女性シンガーの凛とした力強いパフォーマンスに魅了。このバンドのカラーを決めている。

⑤FLYING VISION 『All Night Metal Party '84 to '85』
元祖ガールズメタルと言っても差し支えのない全員女性による日本のHM/HRバンド。ライブビデオに挿入された素の顔を忘れない。『今年は言葉使いを直します』だものねぇ(笑)
ジャパニーズ演歌にも通ずる情念、それをハードなバッキングに乗せて歌う、初期ラウドネスにも似たスタイルだが、あそこまで複雑ではない。ポップな曲からバラードまでバリエーションも多く期待を寄せれる、伸びしろの多いバンドだった。とにかく全員女性というのは珍しいことだし、それ自体が魅力だったりもするのだが、時代は80年代ど真ん中。
ロックの世界は女人禁制的なノリ、日本に限らず、そういう風潮はあった中での活動だけに、厳しいもののあったろう。

特に日本におけるメタルの世界は異様だ。令和の今でも、俺は日本のバンドは聴かないとのたうち回る輩に出会う。作品のクオリティ云々ではない、はなから聴かないは理解不能である。ワタクシは良いものに出会いたいと思って生きている。そこに国籍は全くない。なんならジャンルも気にならない、ましてや日本語も微妙なワタクシにとって、何人だからとか考えられない。こういうのは日本独特の感覚なんだろう。まして、そこに女の子ときたらね、そりゃ大変だよ。

今の若い人には、流石に少なくなった感覚だろうが、30代なら普通にいるでしょうね。日本人だから聴きもしない輩が。
そんな男尊女卑をぶら下げて性差別を繰り返す、前時代的な原始人とは一線を画す、好奇心旺盛な耳をもっている、若い人にこそ知って欲しい。この下手さもリアルな姿だ。彼女たちの活動は、フジ系のノンフィクションなどでやれるレベルだよ。

→同意