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死人贊歌 / 五人一首
火薬バカ一代 ★★★ (2021-06-22 01:18:55)
前作『内視鏡の世界』リリースから10年以上音沙汰がなく、てっきり解散したじゃないかと思っていた五人一首が’20年に発表した、バンドの健在をアピールする3rdアルバム。
例えブランクが空こうとも、しかと見据えられた方向性にブレはなく、鼓膜を引っ掻くように刻まれるVOIVOD辺りを彷彿とさせるGリフに、大作主義の下、技巧を凝らして万華鏡の如く綴られる複雑怪奇な曲展開、その上で炸裂するグロウルとクリーンなトーンによる歌い上げをアングラ演劇の主演女優みたいなテンションで行き来する、思わず「女・大槻ケンヂ」と呼びたくなる個性的なVoとが目まぐるしく交錯する、例えるなら初期筋肉少女帯と人間椅子を足して2で割ってプログレ・メタルのエッセンスを振りかけたようなサウンドは、相変わらず独特極まる音世界を構築しています。
あと、個人的に彼らの作品を購入する最大の動機となったのが、時にリード楽器の役割も果たす勢いで大々的にフィーチュアされているピアノの存在でして。楽曲の耽美性、抒情性を増幅するだけに留まらず、美しさの裏側に潜む狂気や禍々しさも炙り出さんとするその雄弁な活躍ぶりに痺れますよ。特にOPナンバー①は、魔空空間に引きずり込まれた宇宙刑事の気持が追体験できるような(?)このバンド独自の混沌たる個性が濃厚に渦巻く名曲です。
もうちょいキャッチーな部分が出てくると尚良いんじゃないかと思う反面、聴き込みを擁するこの重層さは十分魅力足り得ているので、変にキャッチーにすると折角の個性が薄らいでしまう気もするしなぁ、と。何はともあれ、待ち続けたファンの高まりきった期待にきっちり応える力作であることは間違いない1枚です。
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