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Born Too Late / SAINT VITUS
失恋船長 ★★★ (2021-06-23 13:52:30)
長年バンドのフロントマンを務めていたスコット・リーガースがバンドを脱退。後任にTHE OBSESSEDのワイノが参加、その影響もあるのか、前作とは打って変わって幻惑するリズムがのたうち回る初期のスタイルへと帰還、まさに元祖ドゥームロックに相応しいサウンドを轟かしている。
こうなるとデイヴ・チャンドラーのギターも熱を帯びている、前作のような空を切り裂く暴れっぷりもイイが、やはりこっちなんだろう。
このバンドは、ドゥームと言っても暗黒主義ではない。もっと庶民的でロックなメッセージ性がある、特にマニアの間では話題となった①の歌詞など、彼等の身上を明確に打ち出しているだろう。

個人的な記憶では1986年にドゥームと言う言葉で、初期型サバスを形容する人が周りにいなかった。90年代入るくらいから聴きだした言葉と認識している。そういう背景もあるのだろうが、彼等を受け止めてくれるシーンなどなかったろう。アメリカでは全くウケなかった80年代、彼等に生きる道を与えたのはヨーロッパのシーンだったことを忘れてはいない。
一体いつからサバスが崇め祭られたのか、なぜ、そうなったのか皆目見当もつかないが、このバンドにとっては苦難の連続だったろう。

必要最小限の表現方法を用いるリズム隊も行間を生かし緊張感のあるプレイで魅了、けして熱量は高くないが十分エネルギッシュと感じさせるのは流石、弾力性のあるヘヴィサウンドを司るギターも、病的な神経戦を繰り広げブルース臭も沁み込んだ旋律をうねらせる。
不思議な踊りでマジックポイントを奪うように、彼等のサウンドは我々の理性を侵食してくる。それは魔術的ではないかもしれないが、妖しげで摩訶不思議な唯一無二の世界観に、このバンド特有の魅力を感じさせてくれますね。
筋金入りのドゥームマニアにとってはアイコンのような存在である彼等、これからドゥームに挑戦したいと思う若い人には、80年代の不遇エピソードも込みで、このバンドと対峙してもらいたい。
誰にも聴いてもらえないのに信じることをやり切る姿にメタルな精神性を強く感じます。これぞヘヴィメタルでしょう。

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