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Absolutely No Alternative / ANVIL
火薬バカ一代 ★★★ (2021-07-12 22:49:34)
前作のジャケットではアコギをぶっ壊していましたが、今回はオーディオを完膚なきまでに破壊する金床ジャケットが目印の’97年発表の8thアルバム。
『断じてオルタナティブに非ず』という表題が力強く宣言する通り、本作でも徹頭徹尾、オールドスクールなパワーメタル・サウンドが炸裂。何せOPナンバー①のタイトルからして“OLD SCHOOL”というヒネリのなさ。この直球勝負の姿勢は楽曲の方にも反映されていて、重厚感を増した音作りの下、耳に突き刺さるリップスVo、手の骨折を押して弾きまくるG、相変わらずの音数の多さで荒れ狂うロブのDsとが、これまで以上にヘヴィネスを伴い押し寄せる様は、群がる観衆を蹴散らしながら花道を入場してくる昭和の外人プロレスラーばりの威容を誇っています。特に①における、2、3曲分の音符を無理やり1曲の中に詰め込んだみたいなロブのリード・ドラムっぷりは笑っちゃうぐらいに圧巻。
「元祖スラッシュ・メタル」と評される一方で印象的なメロディも散りばめられていた80年代の作品群に比べると、「フックってパンチのことだろ?」というリップスのきょとん顔が思い浮かぶような、馬力にあかせてブン殴りにくる本作のスタイルはキャッチーさに乏しく、大味っちゃ大味。しかしながら、変に気取らずドカ盛りの定食で腹いっぱいにしてくれる下町の飯屋みたいな熱気とサービス精神漲る本編は、足繁く通う常連客よろしく繰り返し聴き込むことが全く苦にはなりません。メタル愛を高らかに表明する一方、堅苦しくなり過ぎず歌詞は下品でバカ(誉め言葉)という「顔は真剣だけど社会の窓は全開」みたいな隙の多さが実に愛すべき1枚。

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