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Turn Back Trilobite / SACRILEGE(UK)
失恋船長 ★★★ (2022-12-03 12:47:02)
アルバム毎に音楽性が変るバンド、今作もモデルチェンジをはかり聴き手を驚かせている。アルバムタイトルを直訳するならば、三葉虫を元に戻すという意味になる。これこそが今作のテーマであり音楽性の変更の意味にも繋がる。
所謂ドゥームロック的なアプローチに進むのだが、それは北欧のCandlemassなどの息吹にも似た感覚があり、メタルバブルの終焉を尻目に、全く違うアプローチでシーンを切り開こうとした、その気概と先見の明には目を見張りますね。
単なるサバスフォロワーのような安直な手法をとらない確信的なアプローチ、ウネリを挙げるファットなギターは鋭く聴き手の感性を抉り、地を這うだけではないギャロップビートで攻撃性もアピール、初期のダーティさもあったスラッシュビートは一切出てこないので寂しさもあるだろうが、当時としてはまだまだ未開の地である90年代型のシンドゥームロックへの布石となる音楽性を高次元で提供している。深遠なる神秘の世界へと誘う③など、叙情的なメロディとオカルトストーリーテラーの嘆きを抱えながら唄うリンダ嬢のパフォーマンスもハマり、今作の成功例と一つと言えよう。
ただ、彼らの代名詞とも言えるスピード、そして燃えたぎるエネルギッシュなハイエナジーサウンド、そういうものが一切無いのは実験的過ぎたろう。メロウなパートが強くなりすぎた、根幹にあるメタルスピリットは変らないのだろうが、早すぎた変革とも言える。
ほどなくしてバンドは解散。音楽性の変遷が影響を及ぼしたのかは分からないが、このサウンドがシーンに与えた波紋はけして小さいモノではないはず、英国の伝統美、そしてドゥームロックからNWOBHMへの系譜を知りたいのならば手にした方が良い歴史に的な価値のある一枚である。ドゥーム系が苦手な人にはとっつきやすいだろう、ギターも立っているし、何よりドンヨリ系ではなく起伏のある展開も多く一曲の中にドラマが存在する。メロディアスさも十分にある、それだけに聴かせる場面は多い、ドラムも手数が多いから高揚感も十分に感じるでしょうね。
歴史に埋もれたが重要な意味を持つ一枚でしょうね。

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