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72 Seasons / METALLICA
失恋船長 ★★ (2023-04-21 13:45:11)
すっかりモンスターバンドとなり崇め祭られる事になってしまったメタリカ。彼らのピークはとっくに過ぎ、今、アメリカで求心力の高いバンドではなくなっている。少なくとも10代の若者を振り向かせられるようなバンドではない。
そういう環境はかつての売れないとイケないという呪縛から解き放たれているだろう。
もはや世界中にいるメタリカフリークを相手にすれば十分だ。日本でもメタリカという威光は凄まじいだろう。

結論から言えば、一曲が長いである。これと言ったスリルがあるわけではないので、ほとんど曲は、あと1分くらい短くても良かった。しかし、彼らが選んだ音楽性はNWOBHMからの流れを感じさせるモノであり、古典的なスタンスでメタリカ流のアリーナロックをやっている。
リムジンに乗り回し、札束でビンタを食らわすようなゴージャスさ、大きなスタジアムで彼らが暴れている姿を想像するのは簡単でしょうね。今作は、そういうメタリカという大金持ちによる原点を見つめ直すような雰囲気はあるが、もはや、同じマインドには戻れないという音楽性でもある。

そんな穿った見方を一切止めて、好意的な面だけ見れば貫禄のある横綱感はエグい。メタリカは何をやってもメタリカであり、この声が聞こえてきたらメタリカである。現代的なフィルターを通した荒々しい古典メタル、あえて狙ったんであろうスタイルに、このバンドは賢いなぁと思いますね。もうロード、リロードみたいなことはやらんだろう。
時代にすり寄るという選択肢をとらなくても良くなったメタリカ。もう金儲けは十分だろう。

この音は純粋なメタルスピリッツを感じさせる。でも大金持ちの音だ。それはどうすることも出来ない。ソリッドでシェイプされた時代でもない、ヘヴィなリズムと攻撃的なギターは突破力があり、歌メロだって親しみやすい、実に完成された音である。

最小限に抑えられた装飾、その生っぽさは丹念に作られたものであり、ポッと出の新人では出せない味わいだ。間口も広く奥行きだってある、普遍的な魅力に溢れてた快作だ。

でもメタリカという看板を外したら、世間一般的に認知されないだろう。
もっと革新的で野心に満ちあふれたアルバムはたくさんありますのでね。

でも絶賛されまくるだろう。雑誌でも軒並み高評価、丸呑みしてメタリカ最高と言うのが賢い選択だ。そっちの水は甘いけど、それは乗れないなぁ。
今でもゴリゴリNWOBHM聴いている身としてはね。このアルバムをフレッシュな気持ちで聴ける人が羨ましい、でも世間知らずの幼い時代に戻りたいとは思わない。もっと色んな音楽に触れ掘り下げて行きたいねぇ。

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