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LIGHT THIS CITY / FAITHFULL
火薬バカ一代 ★★★ (2023-08-24 00:17:41)
隣国スペインに比べるとHR/HMシーンにおいては今一つ存在感が薄い(失礼)ポルトガル出身で、当時91 SUITE、COASTLINE、AIRLESS等々のメロハー系優良バンドを抱えていたVINNY RECORDSとの契約を得た4人組FAITHFULが'03年に残した1stアルバム。
南欧出身と聞くと、どうしてもクサメロやコブシといったラテン・フレーバーを期待してしまうのが人情ですが、本作にその手のドメスティックな要素は皆無。キャッチーで伸びやかなコーラス・ワークを配し、明るい曲調の中から仄かに滲み出す「切なさ」に胸をくすぐられる秀逸な楽曲が揃ったアルバム前半①~④の流れが示す通り、ここで聴かれるのは哀愁と爽快感がポップにブレンドされたメロディアスHR。BON JOVI似のハスキーボイスを駆使して情熱的に歌い上げるVo、⑨のソロ・パートを始め、ウェットなメロディを一音一音丁寧に紡ぎ出すGを両軸に展開される洗練されたサウンドには、JOURNEYの大ヒット・アルバムを思い起こさせるバンド名と、都市の夜景を切り抜いたアートワークがよく似合う。殊に、憂いを湛えて走り抜けるハード・ナンバーっぷりで本編にメリハリを加える⑥と、「ここに音が欲しい」というスペースを的確に埋めてくれるKeyの良い仕事が光るハードポップ・チューン⑨は鮮烈な印象を残してくれる逸品ではないかと。
ハッタリの効いた楽曲や派手な演奏をぶちカマすプレイヤーを擁するわけではなく、人によっては「地味」とも受け取られかねない堅実な作風なれど、サウンドを構成する要素一つ一つを丁寧に磨き上げた結果、付け入る隙のない完成度を有するに至ったメロハーの好盤。それだけに、これ1枚きりでバンドが消滅してしまったのが残念でなりません。
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