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Cross Purposes / BLACK SABBATH
いおっみ ★★ (2008-12-11 19:37:00)
サバス随一の「超佳作」
劇的サバスの超傑作「TYR」と激的サバスの超傑作「DEHUMANIZER」。それぞれの中心人物(アイオミ/マーティン/パウエル/バトラー/ディオ)からレインボーペアを抜くと、本作の中心トリオ(アイオミ/バトラー/マーティン)ができあがる。
そこに名脇役のニコルズ&新規採用のロンディネリで固めたのが本作の布陣だ。
叙情メロディのマーティン、ヘヴィリフのバトラーは何作にも参加したサバスの「役員」。彼らを一堂に招集した「美味しいどこ取り」なメンツだけにアルバムの方向性もサバスの「美味しいどこ取り」となっている。
美しいバラード、ドゥーミィなヘヴィロック、両方を兼ね備えたナンバー……まるでベストアルバムかのようだ。
ここまで読むと完璧な名盤のようだが、そうではない。
とにかくギーザーとマーティンの相性が最悪だ。
流麗なメロディが凛々しく流れたかと思うと無理なヘヴィリフに邪魔され、ヘヴィグルーヴを捕らえ所のない歌メロが台無しにする。
ヘヴィネスとメロディが共存する曲でも両者は融合せずに乖離してしまっている。
まるで関係ない曲を継ぎ合わせたように展開するI Witness、Immaculate Deceptionの違和感は象徴的だ。
ここまで読むと完全な駄作のようだが、そうでもないのだ。
相性が良くないとは言え、流石は役員。バトラー/マーティンが提供するパーツとパフォーマンスはどれも素晴らしく、ギクシャクしながらも輝く魅力に溢れている。
要はそれらをまとめ切れていないから名曲になれない佳曲止まりなのだ。
唯一、その偉業を成し遂げているのがCross Of Thorns。
この曲こそが、このユニットの真の魅力を伝えていると信じたい。

ヘヴィネスをドラマティシズムに転化するコージーやヘヴィネスに対抗してねじ伏せるロニーであれば違ったのかもしれない。
そうでなくても90~92年頃の神懸かったアイオミならすべてを統合できたのかもしれない。
だが、そうはならなかった。
サバスの美点に満ち満ちていながら空回りしてしまった、佳作中の佳作なのだ。
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