この曲を聴け! 

Rock in Rio / IRON MAIDEN
絶叫者ヨハネ ★★ (2005-11-25 22:49:00)
感動のライヴ盤。……みてください、リオが、25万人が燃えています。真っ赤に、真っ赤に燃えています。もしこの日の地球を宇宙から見下したなら、真紅の光が惑星南部の一角よりたち登り、宇宙を貫く炎の矢となるのが目撃されたことでしょう。
……いえ、この怪現象はガニメデをはじめ、星系各地の観測球にキャッチされており、目下のところ詳細調査中であります。かの炭素系二足歩行生物が多数居住する本恒星系第三惑星上において重大な異変が生じた可能性も否定しきれず、この件に関してはぺテルギウスの銀河連邦探査局上層部も重大な関心をよせており、われわれ第三象限方面第8次辺境領域管理室にとっても目下最大の懸案事項となりつつあります。現時点での報告を総合するかぎり、惑星南半球においてかの炭素系二足生物が定常的に放散する心理的熱量の短期的な爆発的増大により惑星レベルの精神電磁波バランスが大きく乱されたために生じた異常であると推測されますが、詳細の判明にはなおしばらくの時間を要すると思われ…………おや???

話を銀河連邦の通信文(最近、チャネリングによって入手しました。)から地球人類の音楽に戻すとして、このアルバムの凄さを一言でいうとまさしく「何というパフォーマンス!何というオーディエンス!(ライナーより)」ということに尽きます!!
今作最大の功労者は間違いなく、偉大なるバンドを支える彼ら偉大なるオーディエンスです。彼らの後押しがなければ、今作がこれほどまでに感動を呼ぶ作品とはなりえなかったでしょう。
あたかも「祝福された処女の栄光を讃えるために集った数十万の民の、歓喜の歌が地の四隅、天の頂にまで響き渡る」ように、オーディエンスの歓呼の叫びは最初から最後まで絶えることはありません。この熱狂、常軌を逸した盛り上がりを聴いているだけでゾクゾクしてきます。まるで自分がオーディエンスの一人として、ライヴの現場に居合わせたかのような錯覚すら覚えます。

録音・雰囲気ともとにかく最高、とんでもない迫力です。今作にかんしては、音割れだのノイズだのはまったく無意味、演奏がどうのこうのはさらに無意味、どうでもいいことです。オーヴァーダヴ?それがどうした?というところです。ひたすら大音量で鳴らし、踊り、飛び跳ね、オーディエンスの一人となって狂喜の叫びを上げつづければそれでいいのです。(近所迷惑になるし、「あの人は頭がすこし……」というよからぬ噂がヒソヒソ声でささやかれる羽目になりかねないので、住宅街にお住まいの方は注意)

選曲も問題なし、個人的にライヴで省かれがちな大作が多めなのがうれしいです。全曲スタジオ版とは比べ物にならないほどのパワーとテンションで、とくに録音に問題大ありだったブレイズ時代の二曲など、信じられないほどの変わりようです。劣悪なプロダクションのおかげで屍同然だった曲に、生命の炎が宿り、見事に生まれ変わりました。

個人的には
Wrathchildで狂喜
Sign of Crossに驚愕、
Blood Brothers に感激
Fear of The Darkで失神
Sanctuaryで完全昇天、空の彼方まで飛んで行き、
Run to Hillsで白い粉になってキラキラ輝きながら降ってきた、という感じでした。

「すでに終わったバンド」、「年寄り相手に古いメタルを演り続けている、過去のバンド」などと血迷ったことを言う人々には、何とか誘惑してこれを聴かせてあげましょう。いかに彼らを認めない人でも、演奏のテンション、楽曲の破壊力、トータルなライヴ・パフォーマンスの凄さ、なによりオーディエンスの異常な熱狂など、これらを聴けば彼らがどれほどグレートなバンドであり、今に至るまで全世界の何十万、何百万もの人びとに愛され続けている理由がわかるはずです。
デビュー以来25年、Zeppelinのようにロック史的ビッグ・アーティストとの認知を得ることもなく、Metallicaのように時代の追い風をたぐり寄せるのでもなければ、Nirvanaのようなロック・イコン的カリスマを擁することも、Guns&Rosesのようなスキャンダルにも、かの鬼妻率いる某一家のようなショウビズ的商業戦略にも頼ることもなしに、ひとえに音楽の力とロッド・スモールウッド以下、陰に日向にバンドを支える人々の協力だけで、これほど長くに渡り、これだけ多くの人びとに愛され慕われ続けるグループが今の世界にどれだけ残っているのでしょうか?

私の知るかぎり、いわゆる「正統」ロック史的観点から書かれた本で、彼らが「ロックの歴史を作った偉大なるアーティスト」の列に加えられたことは一度としてありませんでした。おそらく今後もありえないでしょう。また今後とも「時代」が彼らに微笑むことも、彼らが時代の風を引き寄せることもないでしょう。昔も今もこれからも、彼らが時代の空気に応えることもなければ、あえて時代に反逆することもなく、ムーヴメントの喧騒には背をむけつつ、あいも変わらずマニアックで気位の高い「Meidenの音楽」をやり続けていくことでしょう。芸能メディアに彼らの行状が派手に取り沙汰されることもなければ、グラミー賞のステージ上でTV用スマイルを披露することもなく、ブロンズ像がどこかの博物館にお目見えすることもないでしょう。メンバーたちの誰一人、偉大なロックのアーティスト、偉大な「時代」の殉教者、偉大なポップのセレブリティー、はたまた偉大なギターヒーローやベーシスト、名ドラマーに名ヴォーカリストとして人々に記憶されることはないでしょう。彼らは生涯バンドの一員としてのみ、その名を残すにとどまることでしょう。そしてバンドの「顔」はいうまでもなく彼、すなわち「偉大なるエディ」であり、スティーヴ・ハリスでもブルース・ディッキンソンでもありません。

何と素晴らしいことよ!! 何と輝かしい「知られざる英雄」たちではありませんか!!これらすべてゆえに私はIron Maidenのファンであり、祝福された鋼鉄の処女の美と栄光を讃えて歌う25万の群集の一人であり、Iron Maidenこそ地上で最も偉大なアーティストの一つである、とここに断言します。

Meidenを知らない初心者の方も、最近のスタジオ作にご不満の方も、「80年代はよかった……」と古きよき時代の思い出に耽っておられる方も、ぜひ本作に接してMeidenがライヴにおいては、今こそ絶頂にあることを感じていただきたいと思います。とりわけ「オールドスクールなメタルはカッコ悪くてイヤ」と敬遠されがちな、10代、20代のラウドロック・新世代メタル・ファンの方々にこそ、このアルバムを聴いていただきたいところです。これほど熱く、激しく、魂を奮い立たせる音楽にはめったに出会えるものではありませんよ。
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