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Altars of Madness / MORBID ANGEL
絶叫者ヨハネ ★★ (2006-03-03 22:42:00)
これって凄い名盤だと思う。楽曲、録音、演奏といった実体的な部分の完成度はいうまでもなく、音の背後に漂う微妙なオーラが「これは紛れもない名盤」「後続のバンドに絶大な影響を与えますよ」という感じなのです。

冗談じゃなく本当に、音の背後に何か「魔的なもの」が宿っている感じがヒシヒシと伝わってくるのです。こういう雰囲気の「人間以上の何かが」侵入している作品って、私が聞いたかぎりでは、あのIron Maidenの「Number of Beast」以来かもしれない(あれはあれで以外にポップな曲調のわりに、ものすごいオカルティックな気配のする作品だった。)。とりあえずリアルタイムでこれを聴いた人の衝撃は相当のものだったはず。なぜデスメタル界において、Morbid Angelが「神」とまで言われているのか、あのNileのメンバーをして「Morbid Angel の前では、俺たちは存在すらしていない。」とまでいわしめた理由がこれを聴くとわかるような気がします。デスメタルが苦手な私にすら、音に秘められた深さと凄みが伝わってくるくらいなので、デス系への感度が高い人が聴いたら、本気でこれは悶絶&昇天モノなのではないでしょうか?

こういう怪しげな話題は別として、純粋に音楽的な完成度の方も極上。楽曲・演奏ともに文句のつけようのない出来で、これがデビュー作とは到底信じられないような完璧さ。音楽に対する彼らの求道的な姿勢がうかがえます。おそらく、すべてが本当に納得のいくレベルに達するまでレコードを出すのを控えていたんじゃないでしょうか(これ以前にすでに完成していた「幻の1st」を「こんなん気にいらん」とそのままお蔵入りにしたというし)。
例えばシンセの音一つを取っても、普通の新人には絶対ありえないような巧みな使い方をしています。普通メタリックな曲にシンセを入れると、たいてい他の楽器の音から浮き上がってしまい、違和感が生じてしまうことが多いのですが、彼らの場合はシンセが他の楽器と同位相で鳴っており、曲の一部としてごく自然に溶け込んでいます。

演奏レベルの高さはいうまでもなし。録音がクリアなせいか、各人のプレイヤーとしての並外れた力量が際立ってます。ピート大元帥の精密機械のようなドラミング(この当時まだ未完成といわれているが、楽器音痴の私にはどこが不完全なのかまったく判別不能。「人間ミシン針」を地で行く速さと精確さ)はもちろんのこと、アザトース大司教の「飛翔する刃の舞い」の如き、流麗かつ鋭利なギターワークは強烈、おもわず「おおっっっ!!」「これは!!」と膝を叩いてしまうような、驚くべきソロを随所で披露しています。とにかく鮮烈で、「霊感の冴え」とか「天与の閃き」を感じさせます。実は私はギターソロというものがあまり好きではないのですが(猫も杓子もやたらにソロを弾きすぎると思う)、これはまったく別物。大司教のギターは技術を越えてほとんど芸術の域、センスと表現力において凡百のギタリストとは完全に違う高みに立っているようです。

たんに「デスメタル」の名盤というにとどまらず、HM全体の名盤として広く聴かれてよいアルバムだと思います。スタイルに対する個人の好悪を超えて、聴き手の心に深く浸透してゆくものを秘めてます。
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