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World Downfall / TERRORIZER
絶叫者ヨハネ ★★ (2005-12-14 21:55:00)
グラインド・コアの開祖、それも今なお伝説として語り継がれる存在と聞いて、さぞかし過激で目茶目茶な音だろう、とビクビクしながら聴いてみたのですが……。これがビックリ、イメージと違ってとてつもなくクールでスタイリッシュ、最高に格好いい音でした。先鋭的なのに同時に決して野卑にならない趣味のよさ。聴き様によってまるで一部のクラブミュージックのような「オシャレ感覚」すら感じられるのが驚き。
これなら普段グラインドのグの字も知らないような清く正しいIron Maiden万歳派(つまり私のような人々)にも全然OKなはずです。デス・グラインドと聞いて条件反射的に思い浮かべてしまう「醜悪」・「暴虐」・「流血」・「混沌」の四大邪悪元素のいずれもないのが、我々のような善良でか弱い羊人間にはたいへんうれしいところ。

狂ったように速いものの一応キャッチーなリフが主導で、装飾部分をすべて削ぎ落としてソリッドでグルーヴィになった初期型ジャーマンメタルと言えなくもないような音(ちょっと無理か?)。昔のB!誌で、あの愛すべきヨーロピアン熱狂者の某キャプテン氏が絶賛していたのも何となくわかります。
リズムのニュアンスがHMの鋭角/直線ではなく、ハードコアのバウンド型に近いのがポイント。アグレッシヴに徹しつつも、曲づくりもおろそかにしていないようで、小気味よくリフの刻みからの、突進モードへのチェンジ、スローダウン/スピードアップの絶妙なタメなど、細かいところまで気を配った楽曲の質の高さには尊敬の念すら覚えます。似たような曲が続いても全然飽きません。ワンパターンになりがちなエクストリーム系ではこれは異例のことです。

演奏レベルの高さはいうまでもなし。「人の皮をかぶったドラムロボ」サンドヴァル大元帥の人外魔境的なプレイなど、驚きを通り越してただただニッコリ微笑むしかありません。ベースも大いにうねっており、こうなるとほとんど爽やかな気分にすらなります。

メロディアスな部分はありませんが、一音一音が非常に冴えており、音そのものの存在感がすごいです。鈍く光るクロームの輝きとでもいえばいいのか、楽曲も演奏も無情なまでにソリッドでクール、ある意味これこそメタル、といいたくなるような硬質で無機的な感触です。衝動的な荒々しさよりは機械的でデストラクティヴな雰囲気。全編に渡って独特の整合感に貫かれています。グラインドが「コア」でありながら、パンクスよりもかえってメタラー層のからの支持が高い、というのもさもありなんといった所でしょうか?

全体に何か高度に洗練された「破壊の様式美」のようなものが感じられ、バンドの個性という枠を超えて普遍的な「型」として通用するだけのポテンシャルを感じさせます。ある意味これがグラインドコアの理想型となったのも当然と言えば当然。
冗談抜きに単にスタイルだけで正統派をやっているバンドより、はるかに「メタル」を感じさせるのには驚かされます。様式としてのHMではなく、文字通りクールで無機的で攻撃的なメタリックサウンドを求める向きにはぜひぜひ。
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