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Eternity / ANATHEMA
mokusatu ★★ (2006-04-15 04:45:00)
96年発表3rdアルバム。
いきなり① 「Sentient」と②「Angelica」の素晴らしさに圧倒される。前作との比較どころか、現実の予定が全部吹っ飛ぶほどの衝撃が走る事請け合い。胸を締め付ける狂おしさで咽び泣くDanielのギターに感情が動かなければ、人間ではない。メタルもゴシックも何も関係ない。音とか音楽とかギターとか CDとかCDの普及とか、それらは全てこういった感動の為にあるはずだ。表現が駄目なら事実を述べるが、私は日本盤買った後さらに、曲数の少ない(再発ではない)輸入デジパック限定盤をまた購入した。それくらいの価値があったし、今もある。
が。
アルバム全体で見ると、この冒頭2曲は「浮いている」事に気付く。ここまで感情をあらわにした楽曲は、実は、他にはない。前作までの病んだ美意識は、この2曲を除いて、やはりこのアルバムにもしっかりと受け継がれている。私のような、その「病気度」を好んだファンからすれば、冒頭2曲は「やれば出来る」事を示した余裕であって、そこでまたこのバンドに惚れ込む事になったのだった。

前作の咆哮型ボーカルは消え、真っ当な「歌唱」がANATHEMA史上初めて採用されている。楽曲は3~5分台となり、重苦しさも絶望も感じられず、一聴しただけで明らかにゴシック/デスの影が消えた事が分かる。「ヘヴィメタル・アルバム」だと言ってしまえる質感だ。が、それはこのバンドの健全性の証左では、決してない。彼らはここに来て、その癒せない病んだ美意識を、ゴシックという「ジャンル」に頼らずとも表現できるほどに成長したのだ。見栄えの良い装飾を纏ったその内側は、前作同様地獄のような絶望に満たされている。
最も分かり易いのが④「Eternity part1」だ。バンド史上最もスピーディーで疾走感があり、シンセも豪快に乗せて、さぁ盛り上るぞ・・・と思いきや、サビに辿り着いてみると、疾走感は消えないのに、いきなりボーカルが消えるのだ。サビの肝心なところに、何も用意されてない。それでも起承転結を当たり前のように成し遂げるこの曲の空虚さ。裏切りの演出。ANATHEMAが獲得したものは、こういった巧妙さであると思う。
ベースのDuncanの名前が多くクレジットされており、彼が主導権を握って制作されたのかもしれないが、彼の作詞・曲は良くも悪くも分かり易過ぎる(④も彼)。やはり美意識の実権を握るのは、Daniel Cavanaghであろう。
最後に、私のANATHEMA理解を大いに助けてくれた平野和祥氏の日本盤ライナーノーツから引用したい。
「今やこのバンドは、ダークさやヘヴィさの要素を直接的に描写しようとしているのではない、むしろ彼らはデス・メタルの暗黒主義の中で異様な形に変容した美意識に基づくサウンドを用いて、それらを聴き手の感性の中から呼び起こそうとしているのではなかろうか。」

→同意