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Falconer / FALCONER
絶叫者ヨハネ ★★ (2005-12-28 19:19:00)
「いやあ、へヴィメタルって本当にイイものですねー」と思わず大仏スマイルを浮かべてしまうような音。のっけからメタルスピリッツ全開、もうこれでもかっ、これでもかっといわんばかりに確信犯的トレンド無視時代遅れ呼ばわり上等だゴラァー的超正統派疾走HMナンバーの連発にガッツポーズの連続、気づいたらあっという間に終わってました。

何でも以前はヴァイキングメタル(デスやパワーメタルに北欧民俗音楽的要素を導入し、勇壮なメロディやコーラスに載せてキリスト教以前のスカンディナヴィアの土着的なカルチャーを賛美する人たちのやるメタルをこう呼ぶらしいです。)をやってた人たちだそうですが、私はその辺にはまるっきり無知なのでちょっとパス。確かにVoの歌いまわしやメロディ・アレンジの節々にフォークっぽいセンスが感じられますが、驚いたことにそれが土台にある正統派HMサウンドとびっくりするほどマッチしてます。
ガチガチの硬質な音色で変則リフ(フォークとメタルの愛の子のようなフレーズ多数)を奏でるギターとフォーキッシュで温もりのある歌声の絡みあいなど未知の快感神経を刺戟されるようで思わずニヤけてしまいます。メタリックな基礎のストロングで無機質な感触とトラッド・フォーク由来の叙情的でヒューマンなタッチが相反するものの調和という具合で上手い具合に互いの魅力を引き出しあっている感じです(まあ、Voが始終民謡系のキャッチーなメロディを歌い続けるせいでサビの盛り上がりが弱くなってしまうという欠点はあるけれど)。特に「ここぞ」という時にやって来る「静かな湖畔」系メロディのコーラスと三拍子系リズムはインパクト大。まさかBlind Guardian以外にこの手のリズムと節回しをHMの曲調の中で使いこなすことができるバンドがいるとは思いませんでした。

バンドの看板的存在(だった)はマティアスのVoですが、ちょうど普通の声でメロディアスに歌った時のハンズィ・キアシュから高潔さを抜いてマイルドにした感じでとても優しく親しみやすい声質です。しかもいざというときには伸びやかに力強く歌い上げる(「叫ぶ」ではありません)こともできます。おまけに英語の発音が抜群にクリアで、歌詞カードを見なくてもここまで歌詞が聞き取れたのはじめてです。しかもこの人、本当に歌うことが楽しくてたまらないようで歌唱が凄く活き活きしてます。聴いているだけでこっちまで楽しくなってくるような歌い方で、彼の歌には聴き手を励ましてくれるような暖かみとパワーがあるのです。しかし、それだけに二作だけでの脱退は非常に惜しいです。音楽の道を進み続けていたら、ひょっとするとキスクやファビオ級のヴォーカリストになれたかもしれないのにね。

音像面の特徴はそのあんまりの無愛想ぶり。いや、こうなる潔いよいです。色香もヘチマもないような無骨すぎる音像、「俺たちに飾りはいらない!!」と豪語する声が響いてきそうです。アラも美点も何もかも剥きだしになる音作り、よほど曲の出来に自信があるのかあるいは単に予算がなかっただけなのか。しかしそれでいてチープな感じやハリボテ感が全然ないのは、彼らの曲が本物だということの証なのでしょう。まったく曲本体はそっちのけでクラシカルなデコレーションに血眼になっているどこかの有名バンドにはこういう「リスナーを欺かない誠実さ」を見習って欲しいものです。

それともう一つ、このバンドは歌詞が凄くいいです。歌詞カードを呼んでいて思わずハッとさせられるようなところがいくつもあります。基本的にシンプルな英語で、テーマも比較的よくあるものなのですが、不思議と書き手の想いや問題意識が素直に伝わってきます。HMバンドの歌詞を呼んでいて思わず共感してしまったり、何か考えさせられることなど滅多にないだけにこれはすごいことです。ギタリスト兼ベーシストが作詞も担当ということですが、彼には本当に詩の才能があるのかもしれません。
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