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Spectres / BLUE OYSTER CULT
火薬バカ一代 ★★ (2008-03-29 22:23:00)
「ニューヨークの冷めた狂気」ことBLUE OYSTER CULTと言えば、やはり、前面に押し出されたオカルト趣味と、
文学的な歌詞が評論家筋から絶賛された、1st~3rdといった初期作品こそが必聴盤なのだろうが、
個人的に、それ以上に愛して止まないのが、この'77年発表の5thアルバム。
バンド内における、自身の影響力の低下を感じ取っていたであろうサンディ・パールマンは、このアルバムを
「前作『AGENTS OF FORTUNE』の成功を受け、その型に固執するあまり売れ線に走ってしまった作品」と批判しているが、
どっこい、定まった「型」の中で徹底的に磨き上げられた、洗練された楽曲の数々は、何れも非常にハイクオリティ。
バンドの代表曲として知られる、日本語の名ナレーションが炸裂する(笑)“GODZILLA"や、ノリの良い“R U READY TO ROCK"
等のライブの定番ソングも良いが、やはり本作の肝は、セピア色に染め上げられた、幻想的なアルバム・ジャケットの
世界がそのまま再現されたかのような、透明感溢れるGサウンドと、浮遊するVo、そして淡く揺らめく叙情性といった要素に
彩られた、ソフト&メロウな楽曲の数々。特に、アダルトで瀟洒な③、ポップ且つ感傷的なメロディが胸に沁みる⑤、
甘やかでリリカルなバラード⑨、本編ラストを締める、冷たく流麗なピアノ・サウンドが絶品な、アルバムの
ハイライト・ナンバー⑩といった楽曲は、ただ美しいだけでなく、常に付きまとう一抹の不安感や奇妙に捩くれた感覚が、
他のバンドにはないBOCならではの個性を主張している名曲。また、ハードロック・バンドならではの重量感と
ドラマティックな曲展開、繊細な哀メロが見事に融合を果たした、荘厳な雰囲気漂う②の素晴しさも特筆モノだ。
一般的な評価は余り高くない作品なれど(というか、そもそもBOC自体が過小評価されているバンドなわけだけど)、
メロディ愛好派のリスナーなら、一度は聴いておいて頂きたい名作。

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