この曲を聴け! 

Medulla / BJORK / BJORK
猿葱 ★★ (2005-03-04 01:11:00)
“芸術とはこういうもの"というのを植え付けられた作品。
前作『Vespertine』は“彼女の内に秘める感情と日常生活そのもの"であったが、
今作は“人間への愛と世界への平和"を感じる楽曲が散りばめられているようだ。
『medulla=脊髄』というタイトルが、
人間にとってなくてはならないものであり、ヒトにとっての本質を示しているように
この作品もまた聴く者の奥底に訴えてくるものを感じるのだ。
しかしながら、多くが「前作とは対極に位置している」と評されている。
それは、彼女のこれまでの音世界(楽器世界とでも言っておきたい)を
より人間的に、より感情豊かに推し進めるかのように、
そのほとんどが肉声(およびそれに近いもの)で構成されていること、
さらには、政治や宗教、人種にとらわれない感覚が
「聖歌」とは違った独特の神々しさを楽曲から感じたり、様々なミュージシャンの起用していることなどから
その異質のアプローチをわかる事が出来る。
表現される音(というか声)は血液の流れや筋肉のうねりなどを想像させるような
音世界(人間世界?)が広がっているようだった。
しかし、個人的観点としては、その人間の芯にせまるような楽曲が
素晴らしさを表すことの紙一重でグロテスクさを連想させているのかも知れない。
例えば自分自身から流れているものなのに、いざその血を目の当たりにするとゾッとする感覚…。
もちろん今までのスタイルとは違った趣を感じるからというのもあるが、
楽曲があまりにリアル過ぎるというのが初聴の印象の悪さの原因なのかも知れない。
聴けば聴く程この“声の魔力"に魅了されていくのだよ…(笑)
改めて“芸術とはこういうもの"なんだと思う。
背景として、『語れ!』で既出のとおり、bjorkは今作が誕生する前に出産を経験している。
もしかしたら、この作品は「人を愛する気持ち」や「独りでは生きて行けない」ことと言った
その子への教えの気持ちをたっぷり込められた作品なのかも知れないな。

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