4th。前作における衝動的なハードコア度合いが抑えられ、ある程度の拡散傾向はあれどもよりゴシックへのアプローチが強まったのでバンドはもとよりゴシックメタルの代表作として挙げられることも多い。Play girl誌で晒した伝説のヌード姿が未だに忘れられない亡きセックス・シンボル、ピーター・スティールの艶かしいVoを中心にじっくりと虚しくも淫猥なエクスタシーに満ちた官能絵巻を展開。環境音的なSEや壮麗なシンセサイザーを絶妙に盛り込み、耽美さを引き立てる。
いきなり耳障りなノイズや楽屋での会話みたいな1、2で面を食らうが、名曲の3からは真骨頂といえるめくるめく耽美世界を全編に渡ってガッツリ堪能できる。前作ほど暗くディープすぎず、時にはうんとコンパクトでキャッチーさに長けた7のように聴きやすさが増したことでより移入しやすくなった。聴けば聴くほどどっぷりハマって抜け出せなくなる名盤。
同意者:
メタルは宗教煌びやかな都会風景と瓦礫の対比ジャケが印象的な5th。より大衆的になり大ヒットを記録した前作の成功による反動なのか初期を思わせるグルーミィーなヘヴィネスが増強されているが、前作におけるメロディアスさも持ち合わせているのでダウナーな沈鬱ムードと開放感が入り混じった独特の空気(前作、前々作の中間ぐらい?)が本作の特徴。ピーターの親族の死といった不幸が関係しているのかメロディには艶かしさというよりも虚しい喪失感といった雰囲気が強く感じ取れ、途中に挟み込まれる短いインタールード曲も薬物の吸引音やら何やら不穏極まる趣なのもそうした印象に拍車をかける。
前2作で顕著だったバンドのイメージを写しだす官能的な妖しさは全体的に控えめなので耽美ゴスとして聴くにはちと空気が重苦しすぎるが、酒を片手にひどく落ち込みたい時にはうってつけのトリップ・ドゥーム作に仕上がっている。
同意者:
唄うひ