88年発表の5TH。 個人的にはテンションが高く、鬼気迫る情熱が迸るⅢが一番好きだけど、本作は逆に精神的に落ち着いて聴ける「いい作品」だと思う。“Helter Skelter"や“Rock Me Now"が示すように、より幅広い層を意識しての曲作りをした結果がこの音なのだと思う。ニール・マーレイが作詞面でかなり貢献しているので、彼の意見もこっち方向にかなり強かったんじゃないかな。ただ、起承転結とかメリハリを好む日本人にはちょっと退屈に聴こえたのも事実。最後まで特に盛り上がるでなくサラ~、っと聴こえてしまうのが少々残念な気がする。 お奨め曲としては“You're The One For Me"、“Fade Away"です、手に入る機会があったら聴いてみてください。
「VIBe」(1988年11月6日発表) 結論から先に言えばこの作品は「駄作」だ。 「SPELLBOUND」「I FEEL THE POWER」「THE BOY」「NEVER LET YOU GO」「KEEP ON MOVING」は、人見元基の歌唱を以てしても如何ともし難い捨て曲以外の何ものでもない。何とか及第点レベルが「TALKIN' BOUT YOU」「TURN ON THE NIGHT」「NIGHT BY NIGHT」辺り。「BIG V」の称号に相応しい楽曲は「FADE AWAY」「ROCK ME NOW」「YOU'RE THE ONE FOR ME」くらいだろう。(「HELTER SKELTER」はカバー曲なので評価の対象外とする。私はそもそもこの曲自体を収録する必要はなかったと思うが、イギリス・サイドの強い要望だったのだろう。イギリス、欧州では「HELTER SKELTER」とアルバム・タイトル(と収録曲、ジャケット)を変更してリリースされているし、「HELTER SKELTER」はシングル・カットまでされている。因みに、日本でもリリースされた) このアルバムの最大の失敗の理由はVOW WOW(山本恭司?)の自分たちへの「過信」だと思う。「BURRN!JAPAN」(1988年11月臨時増刊)のインタビューで山本は「プロデューサーは音をちゃんと録ってくれさえすればいい」と発言している。おそらく、レコーディングは山本恭司主導(もしくはメンバーの合議制)で行われたのであろう。客観的、かつ、第三者的に、楽曲の質、アレンジ、プロダクションを判断する人間の不在の結果がこの作品なのだと思う。同じインタビュー内で山本と厚見玲衣は「THE BOY」をVOW WOW版「STILL」(BOW WOW初期の名曲。1977年7月発表の「SIGNAL FIRE」に収録)と言っているが、「あなたたち本気で言ってるの?」と訊きたくなった。楽曲のクオリティに天と地ほどの差があるからだ。(個人的には人見が唄う「STILL」は聴いてみたかったが・・・) 最新のリマスター・ベスト「ROCK ME FOREVER」(2007年発表)に、本作品からは「ROCK ME NOW」(元々は「BEAT OF METAL MOTION」に収録されていた「ROCK ME」のリメイク)「HELTER SKELTER」「YOU'RE THE ONE FOR ME」(「LINE IN UK」と同音源)の三曲しか選ばれていないことからも、私が記述した内容があながち的外れでないことは理解して貰えると思う。(因みに「VOW WOW Ⅲ」は全曲を収録。「SHOCK WAVES」のみ未発表のLIVE音源) とにかく語るべき内容の作品であることは確かだ。(あくまで「VOW WOWとして」なので、その点は誤解無きよう・・・)
'88年リリースの5thアルバム。 判り易い疾走ナンバーが姿を消し、ミッド・テンポの楽曲主体でまとめられた本編を初めて聴いた時は「随分マッタリとしちゃったなぁ」と思ったものですが、よくよく聴き込めば、多少地味な楽曲にも必ず耳を捉えるフックが仕掛けられており、総合的な完成度の高さでは傑作だった前作『Ⅴ』にも全く引けを取らない出来栄え。 特に、魂揺さぶる人見元基の熱唱と、山本恭司の濃厚なエモーション背負ったG、厚見玲衣の壮麗なるKeyワークが、新見俊宏&ニール・マーレイが叩き出す山あり谷ありの劇的なリズムに乗ってドラマティックに展開していく“FADE AWAY”は、かの“SHOCK WAVES”と同種の感動を味わわせてくれるVOW WOW屈指の名曲です。 また、哀愁を湛えて歌う山本のGが涙腺に沁みる“I FEEL THE POWER”、タメの効いた泣きの叙情バラード“THE BOY”、キャッチーなポップ・メタル・ソング“ROCK ME NOW”、思わず踊りたくなるスウィンギンな“TALKIN'BOUT YOU”辺りは、楽曲の完成度の高さと、益々円熟味を増したメンバーのパフォーマンスとが相俟って、実に胸に残る逸品に仕上がっている。 個人的には、VOW WOWのカタログの中では本作と前作『V』、それに1st『BEAT OF METAL EMOTION』がアルバム・ベスト3かな。