80年代、スラッシュ・メタルとハードコア/パンクのクロスオーバー現象の旗振り役を担ったマイク・ミューア率いるSUICIDAL TENDENCIESが、3rd『HOW WILL LAUGH TOMORROW WHEN I CAN’T EVEN SMILE TODAY』から僅か半年のインターバルを経て'89年に発表した8曲入りEP。これまたタイトルがやたらに長いですが、邦題はシンプルに『檄』と冠されています。 その邦題通り、ここに託されているサウンドはスピーディかつアグレッシブ。スラッシュ由来の疾走感は若干抑え気味にして、その分、重厚さや整合性といったヘヴィ・メタリックなエッセンスの拡充が図られていた『HOW WILL~』に対し、ほぼ一週間でレコーディングを終了させたという突貫作業ぶりが物語る通り、ラフなプロダクションから勢い重視の楽曲まで、本作は生々しいエネルギーの迸りが封入された仕上がりとなっています。 前作を踏まえ起伏に富んだ曲展開を盛り込みつつも、本編は鼓膜に突き立つエッジーなGリフの刻みや、カタルシスに満ちた爆発的な疾走感といったスラッシュ・メタルのエッセンスを大幅回復。特に切迫感を煽り倒す③や7分に迫る長尺をダイナミックに畳み掛ける④は、リフ/リード両面においてキレキレなロッキー・ジョージのGがスラッシャーの血を騒がす逸品。と同時にウリ・ロートをリスペクトする彼氏らしく、②では泣きのメロディをエモーショナルに奏でて懐の深さを披露してくれています。 SUICIDAL TENDENCIESのカタログの中ではスルーされがちな作品ですが、個人的には愛して止まない一作。EPながらアルバム・サイズの満足感が味わえますよ。