フィンランド産ダークアンビエント2020年作 先月発見して驚いたが、どうやら昨年冬にリリースされていたらしい。一応ブラックメタルのジャンルにカテゴライズされてきたバンドだが 純粋にブラックメタル様式の演奏を聴かせるバンドではない。決して卓越した演奏技術で聴かせるバンドではなく、真性なカルト色が魅力だ。 最も愛聴したのはDRAWING DOWN THE MOON (1993年)で、フィンランドカルトの凄まじさを思い知らされたが、その後はそのカルト風味に特化していき インダストリアル要素を含む作品に進化していった。純粋なブラックメタル的音響とはかけ離れた音楽性だったが、その内容の濃さはレジェンド級だ。 前作ENGRAM (2009年)で初期ブラックメタルスタイルに回帰したが、今作は一転、完全にアンビエント化している。そのスタイルの変化が評価の分かれ目。 DRAWING DOWN THE MOONやENGRAM時代のスタイルに愛着があるのは確かだが、アンビエント化は歓迎している。というのも、その真性なカルト臭を 表現するには、むしろアンビエントの方が向いている。また、中期のインダストリアル化の方向性からも、その着地点としてとてもシックリくる。 CD2枚組の大作で、タイトル曲Bardo Existsは23分という尺の長さである。ボリューム感でお腹一杯になりそうだが、没入感は高く、長い尺でも飽きさせない。 元来持っている狂信的で尊大なカルト臭に加え、張り詰めた緊張感が加わったことは、旧スタイルを代償としてアンビエント化したことで得た新たな魅力だ。 ノルウェーではアンチBEHERITがいたらしい。思想的なところなのか、粗暴な音楽性が理由なのかはよくわからないが、少なくともDRAWING DOWN THE MOON時代 以前は忌み嫌われる程の特殊な音楽性だったと感じる。それだけインパクトを放っていた音楽だったと思うが、その醜悪さは今なお健在と言える。 こういうブラックメタルの演奏技術的な醍醐味とは対極にあるカルト風味特化型のスタイルでクオリティの高いサウンドはワリと希少だと感じている。 米PROFANATICAのHAVOHEJの作品群で体験できるカルト臭が志向性として近いが、総合的濃さではBEHERITに軍配、独善的尊大さでHAVOHEJに軍配といった感じだ。