21世紀を目前に突如蘇ったNEAT RECORDSから、これまた復活を遂げたHOLOCAUST(といってもそれ以前から離散集合を繰り返していた)が’96年に発表した4thアルバム…ではなくて。実際は’92年に自費出版された3rd『HYPNOSIS OF BIRDS』の曲順を入れ替えた上に改題し、そこに’93年リリースの4曲入りEPやらMETALLICAの“MASTER OF PUPPETS”のカヴァーやらの音源を突っ込んだコンピ盤的性格の1枚という。 NWOBHM復活組がこの時期の新生NEAT RECORDSに残した作品は、イマイチ開き直り切れていない微妙な代物が多かったと記憶していますが、それらに比べると本作は結構イイ線を行っているのではないかと。METALLICAがカヴァーしてくれたことにより再びHOLOCAUSTに注目が集まる切っ掛けとなった代表曲“THE SMALL HOURS”のリメイク②を聴けば分かる通り、元々BLACK SABBATHばりのヘヴィネスや妖しいメロディ使いが個性の内だったことも、90年代のHR/HMシーンの潮流とマッチ。Voの気の抜けたヘタウマ加減とか、「どこのブラック・メタル・バンドか?」っつーぐらい低劣なプロダクションとかも80年代初頭のまま。いや音質に関しちゃ進歩しとけよって話ですが。 国内盤の解説ではゴッドが「②の価値が全て」とぶっちゃけちゃってますし、日本人好みの泣きや哀愁といったキャッチーな要素に乏しい作品ではありますが、個人的にはエキゾチックな雰囲気漂わす①、フルートやチェロを取り入れた③④といった、乙な味わいのへヴィ且つプログレッシブな大作ナンバーが結構お気に入りだったり。少なくとも1st『NIGHT COMERS』が楽しめた人ならほっこりできるクオリティは備わっているのではないかと。
躍進→改名→解散→METALLICAによる再評価を切っ掛けに復活…という浮き沈みを経た、スコットランド・エディンバラ出身の5人組の活動を総括する2枚組ベスト盤(’03年)。 「METALLICAが“THE SMALL HOURS”をカヴァー」「物騒この上ないバンド名」といった要素から、勝手にスラッシュ・メタルのご先祖様的な音を期待してデビュー作『THE NIGHTCOMERS』(’81年)を購入したら、聴こえて来たのは特別速いわけでもアグレッシブでもない曲調に、のっぺり声でぶっきら棒に歌うVoが乗っかった、ごくごくシンプルなHMサウンド。「思ってたんと違う」と勝手に立腹した挙句、速攻CD売っ払ってその後彼らの作品に触れる機会はなかったのですが、本ベスト盤のリリースを契機にふと思い立ってもう一度対峙してみたら、これが意外なぐらい楽しめてしまったというね。 特に、サバシーなGリフが引き摺るように刻まれる“MAVROCK”や、不穏に渦巻くヘヴィネスの中をVoが浮遊する“THE NIGHTCOMERS”、不協和音がオカルト/ホラー映画のテーマ曲みたいな不気味さ漂わす“THE SMALL HOURS”といった名曲は、(他の方が別項で指摘しておられる通り)、彼らの影響が、スラッシュよりも寧ろドゥーム・メタルやオカルト・メタルといった暗黒メタル方面に伝播していったことを物語るカッコ良さ。 と同時に、Gリフに潜むササクレ感はやっぱり彼らがスラッシュ・メタルの源流の一つである証左と言えますし、GAMMA RAYがカヴァーしたHOLOCAUSTの代表曲“HEAVY METAL MANIA”におけるツインGの絡みの熱さも、NWOBHMバンドならでは。 HOLOCAUSTの活動履歴を振り返るのに便利な1枚なので入門盤にどうぞ。