‘81年6月、バーニー・トーメ(G)脱退5日前に、GILLANがドイツのアーヘンで行ったライブの模様を収めた実況録音盤。中古屋で見かけて「へー、こんなん商品化されてたんだ」と思わず興味に駆られて購入してしまいました。 ライン録りなのか、オーディエンスの歓声が殆ど入っておらず、また本来ショウのOPを飾っていスピード・ナンバー“UNCHAIN YOUR BRAIN”が録音上の不備で未収録という痛恨のミステイクが惜しい作りながら、代表作『FUTURE SHOCK』(’81年)を発表し、脂の乗り切っていた時期のGILLANのライブゆえ、楽曲も演奏も火が出るぐらいにホットでスリリング。「パンク世代のジミ・ヘン」トーメのGは脱退直前とは思えぬテンションの高さですし、何より圧巻なのが、プレイにしろアピアランスにしろ一癖も二癖もある個性派揃いの面子をがっちり従えて、1曲目からキレキレの歌声をブッ込んでくるイアン・ギランその人ですよ。彼のVoにリアル・タイムで触れた最初の作品が(よりにもよって)『紫の聖戦』だったこともあり、正直ギランの実力を侮り倒していた我が身なので、こうして後追いで過去の音源に触れる度に、彼に対する再評価ゲージがグングン高まっていくのを感じる次第(加齢と折り合いをつけた現在のギランのVoも嫌いじゃないですが)。特にDEEP PURPLEとはまた異なった破天荒さが炸裂する“SMOKE ON THE WATER”を皮切りに、ヒット曲“NEW ORLEANS”、お馴染みの“LUCILLE”と続く終盤3曲の怒涛の畳み掛けには、GILLANのライブ・バンドとしての魅力が凝縮されています。 この編成でのライブが見てみたかったなぁと、叶わぬ夢を抱かずにはいられない1枚。
イアン・ギランに対しては、長らく「リッチーを煩わせる厄介者」という(相当に偏った)悪印象を抱えていたのですが、そのような彼に対する過小評価はGILLAN時代のアルバムを体験することによって、遥か彼方へと吹っ飛ばされることになりました。 全英チャート№1の座に輝いた本作(3rd)は、GILLANとNWOBHMを語る上で欠かすことのできない重要作(ジャケットからは想像し難いですけどね/笑)。前2作に比べると破天荒さが幾分薄まりを見せてはいるものの、ワイルドに唸りを上げるバーニー・トーメのG、フラッシーなKeyワークでサウンドを華麗に彩るコリン・タウンズ、スピーディ且つラウドに疾走するジョン・マッコイ&ミック・アンダーウッドのリズム隊・・・と、プレイもアピアランスも個性的な一癖も二癖もある連中を、バンドとして堂々まとめ上げるギランのカリスマ性は、一層研ぎ澄まされて絶好調。 楽器陣が火花を散らしてスリリングに疾走する“BITE THE BULLET”で余裕の喉を響かせたかと思えば、憂いを帯びたドラマティックな“IF I SING SOFTLY”は伸びやかに歌い上げ、更に“NO LAUGHING IN HEAVEN”では字余り気味の歌詞をハイテンションに速射する早口Voを披露・・・といった具合に、その歌声は第二の黄金時代を迎えてもうオーラ全開ですよ。 デビュー以降、ホップ→ステップ→ジャンプの要領で遂に英国HR/HMシーンの頂点に立ったGILLANでしたが、これを最後にトメさんが脱退。後任ギタリストとして現IRON MAIDENのヤニック・ガーズが加入し、バンドは新たな局面を迎えることになります。
全英チャート・トップ10に食い込むヒットとなった『Mr. UNIVERSE』の好評を受けて、'80年に矢継ぎ早に発表された2ndアルバム。 バーニー・トーメ(G)やジョン・マッコイ(B)らも積極的に曲作りに関与するようになった結果、「バンドらしさ」が強化。要所に配された疾走ナンバーや、先行シングル“SLEEPING ON THE JOB”といったイキの良い楽曲が、70年代HRスタイルに別れを告げ、騒々しくハジける本編の「80年代型HMテイスト」を盛り上げます。 ヨーロッパ的な暗さや重さよりも、イアン・ギランのカラッと陽性な歌声を活かした、ワイルドで豪快なノリの良さを前面に押し出す一方、重厚且つドラマティックな“ON THE ROCKS”、B主導でヘヴィに沈み込んでいくような“NERVOUS”もあったりと、この「何でもあり」な感覚がGILLANの魅力でしょうか。アドリブ全開のギランのVoと、コリン・タウンズによるジャジーなピアノをフィーチュアしたブルーズ“IF YOU BELIEVE ME”も最高にクール。 タイトル通り「栄光への道」をひた走るバンド内部で上昇気流となって渦を巻くエネルギーが見事に封じ込められた、全英チャート最高3位をマークする大ヒットを飛ばしたというのも納得の力作です。