名バラード“I’LL SEE YOU IN MY DREAMS”をスマッシュ・ヒットさせ、2枚のアルバムを残して解散したメロディアスHRバンドGIANT。90年代以降は復活と休眠を繰り返していた彼らがFRONTIERS RECORDSの仕切りで3度目の帰還を果たして'22年にリリースした、通算では5枚目となるアルバムがこちら。 オリメンのデヴィッド・ハフ(G)とマイク・ブリグナーディ(B)は健在ながら、売れっ子プロデューサーとして多忙な日々を送るダン・ハフは今回も不参加で、その穴を埋めるのはFRONTIERS RECORDSの必殺仕事人アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ。シンガーはテリー・ブロックに代わって同レーベル一押しの逸材ケント・ヒッリ(PERFECT PLAN)が担当しています。正直なところ、顔触れ的にもサウンド的にも「GIANTの新作」っつーよりは「良くプロデュースされたFRONTIERS RECORDS発のプロジェクト・アルバムを聴いている」ってな感覚に陥ることもしばしばな本作ですが、かと言って、じゃあそれはマイナス要素なのか?と問われれば、さに非ず。抜群のソングライティング・センスとエモーショナルな歌声に下支えされた本編は、高いヒット・ポテンシャルを感じさせるバラード⑥など、フックの効きまくった捨て曲の見当たらない充実度を誇っていて、中でも本編ラストに置かれた⑪は一際インパクトを放つ名曲。果たしてこれがGIANTらしい楽曲なのかどうかはよう分かりませんが、ともかく自分の中で’22年のベスト・チューン候補に燦然と輝くメロディのヨロシク哀愁ぶりにゃ悶絶せざるを得ませんでしたよ。 次回作はもう少し早いスパンでのリリースを、とお願いしたくなる充実作。
ダン・ハフ(Vo、G)と言えば、歌もギターもエモーショナル、曲作りに冴えを発揮し、現在はロック/カントリー分野で引く手数多のプロデューサーとして名を馳せる傑物。その彼が弟のデヴィッド・ハフ(B)、アラン・パスカ(Key)ら、名うてのセッション・ミュージシャン達と結成したGIANTが、1st『LAST OF THE RUNAWAY』のスマッシュ・ヒット後EPIC RECORDSへと移籍して、'92年に発表した2ndアルバムがこちら。 折からのグランジ・ブームに巻き込まれ、セールス的には不本意な結果に終わってしまったと聞く本作ですが、高度な演奏技術と卓越したアレンジ・センスをキャッチーで分かり易い楽曲作りのためにに惜しみなく注ぎ込んだ、ほんのりブルージーな香り漂うメロディック・ロック・サウンドは、傑作だった前作にだって引けを取らない充実っぷり。 90年代という時節柄、メロディの透明感やKeyの活躍の場といったAOR/産業ロック色はやや減退。一緒に歌いたくなるアリーナ・ロック然としたOPナンバー①、7分以上に及ぶ重厚且つドラマティックな②、あるいはホットなGプレイをフィーチュアした疾走ナンバー⑥等に代表される通り、今回はよりダイナミックにロックしているとの印象が強い作風です。ただそうした楽曲においても必ず耳を捉えるメロディやコーラス・ワークが仕込まれていて、大味感の蔓延を巧みに逃れているのがニクイ。PVも作られたキャッチネスと仄かな哀愁の同居が秀逸な名曲④、泣きまくる⑤と大らかな⑩という2種のバラードで本領が発揮される、ダンの歌とギターにも涙を誘われずにはいられませんて。 発表のタイミングがもう少し早ければ、ヒット・チャート上位にランクインしたって不思議ではなかった力作。
1992年に発表された2ndアルバム。全12曲で58分の作品。 基本的には前作と似たような音で、これも非常に良いアルバムだと思いますよ。 ちょっとブルージーさが薄まって、シンプルでポップなロックに近くなったような印象ですね。 前作でいう"Innocent Days"・"I'll See You In My Dreams"のような、 超強力なキメ曲はないかもしれませんが、良曲揃いの、バランスの良い作品です。 ①"Thunder And Lightning"や⑥"Time To Burn"のようにリフで攻めるノリの良いHR、 ④"Stay"・⑧"I'll Be There (When It's Over)・"⑩"Without You"などの哀愁メロディアスナンバー、 ⑤"Lost In Paradise"や⑪"Now Until Forever"のような美しいバラード、という具合に粒揃い。 デビューから2作続けて完成度の高いアルバムで、GIANTというバンドの実力の高さが窺えます。